※名前がひらがなの愛猫は、文章内でわかりやすいように名前を色付けして表示しています。
忘れてはならない日
2021年4月9日。
暖と温の母猫であるのらみは交通事故に遭い、虹の橋へと旅立った。
避妊手術を済ませたのらみはあちこちでご飯をもらう、いわゆる野良生活をしていた。
野良猫と外飼い猫の狭間のような生活環境でも彼女はたくましく生きていた。
健康トラブルのあったのらみの子猫・暖も成長とともに症状が見られなくなり、無事に去勢手術を済ませ、温と共にすくすくと育ち、さほど手がかからなくなっていた。
事務所の窓を隔てて顔を合わせる母猫と子猫たちの姿を見ていくうちに、私はもちろんのこと、上司も社長ものらみにすっかり情が湧いていた。
上司と相談し、のらみも事務所で飼いたいと社長にお願いしようと話していた矢先のことだった。
あと一日早く決断していたら
避妊手術をした時点で決断していたら
出産後すぐに決断していたら
のらみの訃報を聞いたそのときから、私の後悔は決して消えることはない。
職場が交通量の多い通りに面していることは十分承知していた。
だから職場組・きゅうの外出自由の飼育を辞めさせて完全室内飼育に切り替えたのに。
こうなることは予想できたはずなのに。
およそ1年の付き合いしかないけれど、私は『愛猫』としてのらみもメンバーの一員とした。
他の愛猫たちとは違い、『うちのコ記念日』はないが、うちのコにしようと考えていたのだからやはり『愛猫』と言っていいと思う。
のらみの命日である今日、4月9日にのらみのことを綴ることにした。

置き去りにされた猫
2020年初夏。
彼女(猫)は職場の駐車場に現れた。
上司や社長の話では、近隣住民が引っ越す際に猫を置き去りにしたらしい。
彼女の住んでいたアパートのゴミ捨て場前に、扉の開いたキャリーケースが堂々と置かれていたとのこと。
そのアパートはペット可物件ではない。
そもそも、こっそりと飼っていたのだろう。
引っ越し先に連れて行かなかった理由は今となってはわからない。
と言うより、わかりたくもない💢
これは遺棄といっても過言ではない。
当時も行き場のない怒りを覚えたが、また怒りが再燃しそうだ💦
怒りは一旦心の奥に置いて、彼女(のらみ)との思い出に戻ろう。
人懐っこい猫
のらみはとても人懐っこい猫だった。
おそらくまだ1歳未満。
生後半年か、7か月くらいだと推測した。
職場近隣はのらみ以外にも猫が数匹うろついている。
中には首輪をしている猫もいるので、一概にすべての猫が野良猫とは言えなかった。
のらみも首輪をしていた。
だが飼い主が分かるようなプレート等はついていなかった。
保護しようにも捨て猫なのかどうかがわからない。
キャリーケース等の状況からして、『ほぼ捨て猫確定』ではあったが、万が一飼い主が戻ってきたらと思うと迂闊に保護はできなかった。
職場の駐車場に入り浸ることもなく、住んでいたアパートに居つくわけでもなく、辺りを放浪していたと思う。
私たちに姿を見せない日もあった。
人懐っこい性格なのであちこちでご飯はもらえたのだろう。
野良生活をしているわりには痩せていく様子は見られなかった。
のらみを見ていると、野良生活をしていたえにしを思い出した。
彼女の置かれた状況が、かつてのえにしに似ていて少しずつ情が湧き始めていた。
妊娠発覚
のらみが野良生活を始めてから2か月が経過する頃、恐れていたことが発覚した。
妊娠していたのだ。
久しぶりに見る彼女は大きなお腹を揺らしながらご飯をおねだりにやってきた。
出産直前ではなさそうだが、おそらく数日中には産むであろう大きさだった。
女の子であることはわかっていたが、避妊手術の有無を確認する方法はない。
飼い猫だったことから「もしかしたら手術をしているかもしれない」と期待していたが、見事に外れてしまった。
久しぶりの出現からは職場の駐車場を離れることはなかった。
ここで産むと決めたのだろう。
倉庫の辺りをウロウロしたり、廃棄するダンボールを積んだ場所を確認したりしていた。
おそらく初めての出産のはず。
本来ならすぐにでも保護して、安心して出産できる場所を提供してあげるべきなのだろうが、職場なのでそう簡単にはいかない。
私と同じくらい動物好きの社長や上司が、私が泊まり込んで世話をすることに反対はしないと思ってはいたが、言えなかった。
当時、私は鼻腔内腫瘍と腎臓を患うほおづきの看病・介護をしていた。
食事の介助や強制給餌、皮下点滴を自宅でしていたので、仮にのらみを保護しても、実際には職場に泊まることはできない。
かといってのらみを自宅に連れて帰る、あるいはほおづきやえにしを職場に連れてくるという選択は私にはできなかった。
どちらを選んでも、双方にストレスをかけることは間違いない。
何もできない私は、のらみの初めての出産を見守るしかなかった。
台風通過中
2020年8月24日。
台風が沖縄を通過していた。
そのため、職場は臨時休業中になった。
いよいよ出産かと思うくらい、のらみのお腹はパンパンになっていた。
「せめて台風が通り過ぎてから・・・」
そんな切なる願いも暴風が吹き飛ばしてしまったようで、のらみは無人になった職場で産気づいたらしい。
台風のため、倉庫は開いていなかった。
彼女が選んだ出産場所は、ダンボール置き場だった。
翌日、出勤すると上司からのらみが出産していることを聞いた。
そっとダンボール置き場をのぞき込む。
小さな命が幼くしてママ猫になったのらみに包まれるように寝息をたてていた。

幼い母猫
のらみは無事に5匹の赤ちゃんを産んだ。
この時点でのらみを含む赤ちゃんすべてを保護するべきだった。
後悔先に立たずとはまさにこのこと。
母猫となったのらみがしっかりと育児をしていると信じ、あまり干渉しなかったことを後悔した。
すくすく育っていると信じていた子猫は一日、一日と衰弱し命の灯が消えてしまった。
残ったのは2匹。
今の暖と温だ。
当時、2匹のうち1匹は健康状態が悪く、放っておくと命の危険があったため保護する必要があった。
子猫の衰弱死が続いていたこともあり、念のため目の開いたばかりのもう1匹(現在の温)も一緒に保護することにした。
驚いたことに、子猫たちを取り上げても怒りもしなければ攻撃もしない。
気持ちがまだ幼いのらみは、自分自身が人間に甘えるのに必死だった。
子猫2匹を保護した後、のらみは数日間は子猫を探す様子はあったがすぐに人懐っこい放浪猫に戻った。
「そのままにしておくとまた妊娠するかもしれない」
心配した社長が「避妊手術をしよう」と言い、えにしのかかりつけ獣医へと連れて行った。
のらみは獣医師の見立てでもやはり推定年齢が1歳未満だった。
おそらく8か月前後くらいだろうとのこと。
産後間もなく、まだ乳腺が張っていたため、少し落ち着いてから避妊手術をすることになった。
余談だが、『のらみ』と命名したのは社長である。
ご飯をもらいにくる彼女にいつのまにか名前をプレゼントしていた。
名前をつけるほど社長が可愛がっているのなら、「もしかしたらのらみも職場で保護できるかも⁉」とひそかに期待したのは言うまでもない。
ただ、期待しただけでそれを口にする勇気が私にはなかった。
メインの住処と認定された我が職場
のらみの避妊手術後も1匹の子猫(現在の暖)の状態が思わしくなく、のらみの保護の話は何となくうやむやになっていた。
持ち前の愛嬌の良さと人懐っこさでご飯にあぶれることはなかったのだろう。
野良生活にもかかわらず、のらみは毛ヅヤもよく健康的だった。
しばらくすると、産後もあちこちを放浪してご飯にありついていたであろうのらみは、最終的にこちら(職場)をメインに行動するようになった。
朝ご飯を食べて散歩へと出ていき、昼に戻ってきて昼寝をしてまた散歩へと出ていく。
そして夕方に戻ってきてご飯を食べて、ダンボールの寝床で寝る。
そんな生活を送っていた。
守ってあげられなくてごめんね

昼寝中にカメラを向けると、気配に気づいて起きるのらみ。
ものすごく眠そうな顔はするが一応はカメラに顔を向ける🤭
今ここにのらみがいたら・・・
そんな妄想を時折することがある。

暖とのらみ。
並んだらどんな感じなんだろう。
のらみの遺伝子を強く受け継いだと思われる暖とのらみが母猫とは思えないほど変貌した温。
3匹が並んだらどんな感じなんだろう。
過ぎたことを後悔してもどうしようもないことは十分わかっている。
のらみを守れなかったことをどんなに悔やんでも、のらみが戻ってくるわけでもない。
私にできることは、守れなかった命を忘れずに、守り続けていかなければならない命に正面から向き合っていくことだけだ。
在りし日ののらみの写真をみるだびに、そう心に刻んでいる。

のらみの思い出話は出だしからやや暗いムードになってしまった。
次は彼女の可愛さをもっとアピールできるよう努めます☺️
😌のらみの忘れ形見、暖と温のおススメの記事はこちら
→シャムシャム詐欺の兄弟が無事に4歳になりました。親愛なる温と暖へ贈ることば🥰
コメント